拝啓、天国のお兄様。 死んだ人にこういうのも変ですが、元気でやってますか? こっちはそれなり。 オレがきちんとしたエクソシストになって、もう4年が経ちましたね。 未熟ながらも、デスクワークと平行して頑張っています。 ごたごたしたりもしたけど、神田とも最近仲良くやっています。 真っ直ぐな人なので、たまにぶつかったりもします。 さっきもまた、ちょっと口論になりました(まいっちんぐ!)

「名前…は、allen walker、で合ってるよね…?」
「はい」
「性別は……本当に男の子? 今ならまだ引き返せるよ?」
「何度言ったら分かってくれますか、?」

目の前にいる色素の薄い子は、新しく入団してきたエクソシストです。 ちなみに、寄生型。 「って昔から天然っぽいとこあったけど…ついに 頭まで、やられちゃいましたか?」にこりと笑って、そう言う。 新米エクソシスト、寄生型、そして腹黒。 対処に困るなあ…非常に。 そんなことを浮かんだ意識で考え始める。 彼は、オレが「え、ホントに男?」と冗談交じりに聞く限りいくらでも
「てめぇこの後に及んでまだ言うか、このスットコドッコイめが」
 と言わんばかりに否定してくるのだ、(、)(ちょっとだけ怖い、でーす!)

「…はは。 ヘルプ! ミーーーー!!!」
…大丈夫ですか?
「はは、悪いなその人 年中頭のネジ緩んでるから」
「! …あ、はじめまして」
「新入りくんだよな?初めまして、えーと…」
「アレン・ウォーカーです」
「そう、それ。 」
「ちょっと。 いきなり沸いてきてそれかあ? くん」
「ココア淹れてって、あんたが言ったんじゃないですか」

 …いや、まあそうだけども。 頬を掻いて、疲れを吐き出すように苦笑いをする。アレン・ウォーカーはどうやらオレのことを知っているような風に会話を進めるが、当のオレは彼に今日初めて会ったのだ。なんだかよくわからなくて、詰まるところは少し疲れてきてしまった。

さん?」
「ん。 はじめまして、医療班班長の助手やってます、 です。」

「あ、は…はじめまして!」「うん。 よろしくなー」ココアの湯気に薫りが乗って、こちらまで漂ってくる。 普通のココア2つとオレへの鍔叉くん特製ココアを1つ、机にゆっくり丁寧に置くと、彼はその骨ばった手をアレンに差し出した。(おい)(お前ら、なんでそんなに息投合してるんだ)なあ! 呆然としたようにココアを啜って、リナリーの方を見る。 くりくりとした黒い目と視線がかち合ったので、なんとなしに笑いあってみる。 いいもんね!オレはオレでリナリーと仲良くしちゃうんだから! 「ねーっ!」「?」「、セクハラって言葉知ってます?」 くんが用件を終えて、別室へ戻って行ったのかアレンは、割と呆れたような、軽く引いているような視線でリナリーに抱きついたオレを見る。

「…コホン。 えーっと、身長体重、好きなタイプは。 さあ答えろ」
「168cm、58kg。 あとなんですか、好きなタイプ? …興味あるんですか?」

 含み笑いをして、少々棘の入り混じった言葉がアレンの口から 次から次へと零れる。 にこりと笑った顔にどこか怖気を覚えたので、顔を軽く傾けてカルテをコツコツと叩く。 「や、やっぱり結構です…」リナリーの横で変なこと言われたら、たまったもんじゃねえ!! 「ん‥ーと、じゃあ血液型、は…、いーや。 寄生型って出にくいんだよなー」 襟元を正しながら息を吐く。 出そうと思えば出せる、が、常人と違い判断基準がややこしく、その上時間が掛かる。 (寄生型の血液検査するくらいなら)(オレ溜まってるオペ2本は片付けられるね) ペンをくるりと指先で回転させる。アレンが意外そうな表情で、オレの目を見た。

「やっぱわからないんですか? 意外と無能で「O型A型B型AB型血液型不明! さぁ、選べ! レッツチョイス!」

聞こえたワードを、遮るようにして叫ぶ。 この子いま、無能とかおっしゃりましたね!? この医療班の天才リーダー、くんに!(自分で言うことじゃないですよね)(うんまあ わかってるけど) 「…指、ささないでくれます?」「ごめん」アレンの鼻っ面に、勢いで投げかけたオレの指は、彼の右手に掴まれデスクの上まで下ろされる。 「…不明で、お願いします」「え、なんで? お得だよ? チョイス可能だよ?」 当然だ、という風に彼は言い切る。 オレはといえばカルテに言われたとおり「血液型不明」と入力しつつも、それに疑問で返した。

「合ってない血を、僕の中に詰め込む気ですか? 良い度胸ですね、
「 ご め ん な さ い 笑 わ な  い で 」

言い返すことが目的で、そこまで考えていなかったんです! 失態を犯したせいで、ほんの少しだけ頬が高潮する。 それを隠すように包み込むと、アレンが溜息を吐いて目を伏せた。

「変わりませんね。 抜けてるとこ」
「シャラップ。 何時の話だボーイ」
「…師匠のとこにいる時です。 覚えてませんか?」

 師匠。「クロス元帥?」「…。 そうです」確認を取るように訊ねると、アレンは少々気分を悪そうにして答える。(…クロス?)オレは少なくとも、彼のことは名前でしか知らないはずだ。それをこの目の前の少年は、『クロス元帥のいる所で会った』と言った。

「ああ、オレは覚えてない」
「………………へ?」

 驚いたように、そして訝しげに、彼は眉をひそめた。 オレはそれに苦笑いを返して腕を組む。 「…クロス…元帥のところ、か」「…?」 オレは少しだけ昔、元帥3人のところへ修行、という名目でコムイに半年間だけ、外へ送り出された。クラウド元帥、ティエドール元帥、…クロス元帥、という順だ。(ティエドール元帥の所までは覚えてるんだけど、なあ) クロス元帥のところにいた記憶が明確か、と聞かれるとオレはそれにイエスとは答えられない。 ぼんやりと、知ってはいるけど、それを正しいと言い切れないのだ。 椅子に身を沈めていく。「覚えてない、ですか…」 目を軽く瞑った後、残念そうに微笑むアレンに顔を向ける。

「…、ごめんな」


***


「左手見せてくれる?」
「あ、はい」

 必要な場所を埋めたカルテは、個人情報だとか重要書類だとかそんなことは関係ない、とでも言う風にデスクに投げ出されている。 冷めたココアを一口啜りながら、アレンの左手をぼんやり眺めた。(…痛そうだなあ) 神田は手加減と言うものを知らないから。 乾いた笑みでそのイノセンスに侵された手を、柔らかく取る。 「アレンくんの直るよね? くん」「ん、もちろん。軽い方さ」痛んだ神経をなでると、アレンの口から痛そうな悲鳴が零れる。

「軽いんですか、これ」
「おうともさ」
「…………。 が直すんですか?」
「うぉい。 失敬なヤツだな貴様。 …イノセンスは、コムイが直してくれるよ」


椅子から立ち上がってそう言うと、アレンはきょとんとこちらを見つめた。 「ん?」 その表情にこちらも少なからず、疑問符を浮かべる。 リナリーの顔を見て、ようやく思い出した。 そうだ、アレンウォーカーはまだ、コムイに会ったことが無いんだ、と。

「教団の室長なんだけどね、科学班にいる感じの強い、そろそろ三十路の変なヤツ」

嫌味をこめて、いかにも偏見を持った独自の『イメージ』をアレンに語る。 「はい、リナリー」「あ、ありがとう…くん」 手を差し伸べて、リナリーを椅子から立ち上がらせる。 それに続くように、『コムイ』の姿を(オレの曖昧で、皮肉の篭もったイメージから)想像していたアレンが立ち上がる。 ひとつ欠伸を零して、右手をドアノブにかける。


「はーんちょーう? どーこ行くんですか、…ねえ?」
「コ…コムイんとこー」

 その瞬間、書類片手ににこにこと、笑みを顔に貼り付けたくんが後ろから声をかけてくる。(いやきみ)(怖いよ…!) 明らかな作り笑顔に気圧されながらも、どうにか行き先を告げる。 最近ドアに近づくたび声をかけられ、牽制されるのは、回ってくる書類の量に班員が比例しないせいなのだろうか。 つい先日アジアの方の支部にも、何人か送ってしまったし。(すんません…!)「止めても無駄だぜ…! オレは行く! だが、哀しむことはない…なぜなら」「何変なこと言ってるんですか、」「シャラップ! 言葉の途中でお前は!!」オレの横から、一足先にアレンとリナリーが外へ向かう。

「ったく…はやく、帰ってきてくださいね」
「…。 え、いいの‥?」
「 は や く 帰ってきてくださいね?」
「 …うん」

鍔叉くんが、仕方無い、そして少し困った、というような意味で、静かに、誰にも聞こえないような息をひそやかに零す。 「これリーバーに持っていってください」「このちゃっかり者!」 オレの背丈の半分くらいの書類を親指で指したあと、彼は隣の部屋に使用済みカップ3コと共に消えていった。


「うわ、重そうですね」
「………。 え、お前…そこには『僕が持ちますよ』とかいう歯の浮くセリフ、続かないの?」
「…。 、ですし」
「馬鹿野郎ォォォォォォ!!!!!」
くん、私半分 持つわよ?」
「やだなあ、リナリーに荷物なんて持たせられるわけないだろ?」
「(…この人は)」